ガルバリウム鋼板に期待を持ちすぎていませんか?
住宅材の中でも、比較的人気の高いガルバリウム鋼板。屋根材はもちろん、外壁材としても使用でき、しかも、耐久性・耐震性などの性能に優れているとなれば、もちろん利用するに越したことはありません。しかし、業者による過剰な広告のせいで、少し世間での認識にズレが生じてしまっていると感じます。
「ガルバリウム鋼板はメンテナンスフリーだから定期メンテナンスは不要」
「高耐久・高性能だから、そのまま放置しても大丈夫」
ガルバリウム鋼板のことを検索すると、このような謳い文句をよく目にしますが、これらの広告を見て
「なるほど!ガルバリウム鋼板にすれば、後が楽だし安心」と考える方もいれば
「本当にそこまで優秀なのか?」と首を傾げる方もいると思います。
確かに、ガルバリウム鋼板は高性能で、この知識については誤りはありません。しかし「高性能だから完璧」ということにはなりませんので注意しましょう。
住宅材にも性格があり、得意不得意が異なるため「完璧な住宅材」は存在しません。
この記事では、ガルバリウム鋼板の利点ではなく欠点(弱点)に重点を置き、ご紹介させて頂きます。
目次
1.ガルバリウム鋼板は錆びないは「ウソ」
世間でのガルバリウム鋼板の認識は「錆びない」・「メンテナンス不要」・「軽量で高耐震」などなど様々なメリットが言われています。確かにあながち間違えではありませんが、正直に言わせてもらうと「大袈裟」といった印象が取れます。例えば最大のメリットとしてよく言われている「錆びない」ですが、この真相を突き詰めると「錆びない」ではなく「金属板の中では錆びにくい」ということ。
このように少しの認識のズレで、ガルバリウム鋼板に鎧を被せたよに本来の姿が見えにくくなってしまっています。前途でも言ったように、確かにガルバリウム鋼板は素晴らしい住宅材ですが、決して完璧ではありません。きちんと欠点を理解した上で、改めてガルバリウム鋼板と言う住宅材を見直しましょう。
2.ガルバリウム鋼板の7つの欠点
2-1.傷が付きやすい
ガルバリウム鋼板は「薄くて軽量」なのが魅力の一つですが、平均0.4mm程度と薄いからこそ傷が付きやすいという弱点もあります。傷が付いてしまうと、ガルバリウム鋼板の表面に施してあるメッキが剥げれてしまっている場合があり、その剥がれた箇所に雨や外気などが直接触れると、サビの一種である赤錆びの発生原因になります。また、穴が発生してしまっていると、より重症な劣化症状となってしまいます。
赤錆びや小さな穴でも発生した場合には早急な対処が必要となりますので、専門家に診断してもらいましょう。
ガルバリウム鋼板の劣化症状について詳しく紹介していますので併せてお読みください。
2-2.潮風に弱い
ガルバリウム鋼板は、塩害地域など潮風が多く吹く地域には向きません。潮風が原因で、サビの一種でもある白錆びが発生しやすくなります。白錆び自体は住宅に大きなダメージを与えることはありませんが、美観的には決して良いとは言えません。塩害地域にお住まいの方で、金属板の住宅材を取り入れたいと考えている方は、ガルバリウム鋼板よりもステンレスをお勧めします。ガルバリウム鋼板よりも費用が高くなってしまいますが、ステンレスは錆びにとても強いため、潮風によって受けるダメージは少ないでしょう。
2-3.断熱効果がない
ガルバリウム鋼板には断熱効果は期待できません。その理由は、ガルバリウム自体に断熱性はないため、室内の温度が上昇しやすいです。また、熱伝導率が高いため、住宅材が太陽熱をダイレクトに吸収してしまいます。これらの弱点を補うために、一般的に住宅材として使用しているガルバリウム鋼板には、ガルバリウム鋼板自体に断熱材を取り付けて販売されています。また、遮熱塗料を用いるケースもあります。このように、ガルバリウム鋼板自体には断熱効果はありませんので、これらの要素を取り入れるためには他の断熱材と併用して使用する必要があります。
2-4.遮音性が低い
前途でも言った通り、ガルバリウム鋼板自体は0.4mmと薄く、振動を伝えやすい材質ですので、同じ金蔵板であるトタンの弱点でもある遮音性の低さはガルバリウム鋼板にも同等のことが言えます。通常は防音対策として、断熱材料で兼用することが多いのですが、天井裏に吸収材などを敷き詰める施工方法もあります。
2-5.結露が発生しやすい
ガルバリウム鋼板は、他の住宅材に比べると結露が発生しやすい傾向にあります。それは、断熱性を高めるためにきっちりと隙間なく施工しなければいけないからです。通常の住宅材の場合、ある程度湿気が外へ逃げるように施工されますが、ガルバリウム鋼板の場合は、隙間なく施工していきます。隙間なく施工すれば気密性は高まりますが、普段の生活の中で発生する暖気や湿気も一緒に密閉されてしまいます。この暖気や湿気は天井に登り、天井裏や小屋裏に到着し閉じ込められた状態となり、ここで結露として形成されます。
結露が発生してしまうと、住宅の腐食にも繋がってしまうため、きちんとした対策が必要です。この結露を防いでくれるのが屋根断熱、または天井断熱で、冷気と暖気を天井裏に伝えない方法となりです。
2-6.洗う手間がかかる
住宅の箇所によって雨があまり当たらない軒天や軒裏などがありますが、それらの箇所にはガルバリウム鋼板は向きません。と言うのも、ガルバリウム鋼板は定期的に水を当ててあげないと白錆びの発生原因となってしまいます。白錆びは住宅にとって大きなダメージはありませんが、美観や衛生上決していいのもではありませんので、定期的に水をかける方が最適です。
塩害地域や潮風が吹きやすい地域は1〜3ヶ月の間に1回、その他の地域は、年に1回を目安に水をかけましょう。また、水量の目安としては自宅で洗車するときに使用する水の量程度で大丈夫で、高圧な水量で洗うのは避けましょう。
2-7.業者選びが難しい
ガルバリウム鋼板はとてもデリケートな住宅材です。施工時に傷をつけることは当然ダメですし、施工の際に発生してしまう鉄粉をきちんと処理しなければ貰い錆び等の劣化症状を招きます。また、経年時に塗り替えを行う際は、専門的な技術も必要となります。業者側も扱いづらい理由から、施工を嫌がる業者も中にはいますので、業者選びの際にきちんと確認しましょう。
3.外壁の場合と屋根の場合の注意点
ガルバリウム鋼板は、外壁・屋根の両方に使用できる住宅材です。使用する箇所によって注意点も変わってきますので確認しましょう。
3-1.屋根の場合
外壁材としても利用できるガルバリウム鋼板ですが、屋根材として利用している住宅がほとんどです。屋根に使用したときの注意点は以下の通りです。
施工時に発生する鉄粉の処理
これは外壁のときにも言えることですが、特に屋根のときには注意が必要です。ガルバリウム鋼板を施工する際は端部等を切断するのですが、この時に発生する鉄紛はダイレクトに屋根材の上へと落ちてしまいます。この鉄粉を施工後にきちんと処理しなければ、その後の雨などで鉄紛が錆びてしまい、その錆が屋根材として施工したガルバリウム鋼板へと移ってしまいます。この錆びのことを貰い錆びと言い、発見が早ければ中性洗剤で落とすことが可能です。
突風によるトラブル
住宅のアンテナを屋根に取り付ける家庭が多いのですが、突風や台風の際にアンテナが倒れて傷(凹み)が出来てしまったなどのトラブルがあります。相手が自然災害ともなると対処方法に限りがありますが、最近では壁に取り付けるタイプのアンテナもありますので検討してみてはいかがでしょうか。
3-2.外壁の場合
一時は外壁に使用することが疎遠となっていましたが、最近ではモダンな雰囲気が良いと再び外壁材として用いられる住宅が増えてきました。外壁に使用したときの注意点は以下の通りです。
ぶつからないように気を付ける
外壁に使用した住宅で最も多くみられるのが「自転車の出し入れ時にぶつかって傷をつけてしまった」・「子供が石を投げて傷(凹み)を付けてしまった」などの状況です。ガルバリウム鋼板はとにかく傷に弱いです。それは自然災害のみならず、普段の生活からでも起きやすいトラブルなので細心の注意が必要となります。自転車や子供の遊び道具などは、外壁から離れた場所に置くなどして工夫しましょう。
施工が難しい
外壁材として取り入れる場合、窓廻りなどの雨仕舞が困難を極めます。防水気密層という下地との間に空気の通り道と水分の逃げる道を作る作業をきちんと行わないと、内部に雨水が入り込んでしまう原因に繋がってしまいます。こればかりは業者側に任せてしまう内容ですので、きちんとした実績のあるガルバリウム鋼板専門の業者に依頼するか、または打ち合わせの段階から施工方法を聞くなどして対応しましょう。
素地だと黒点現象が起こりやすい
ガルバリウム鋼板の素地※を使用した場合、黒点現象が発生するときがあります。
黒点現象とは、ガルバリウム鋼板が部分的に黒くなることを言います。原因としては、セメントが付着し、雨に濡れることでメッキに使用されているアルミ成分が、セメントのアルカリ成分に反応し黒くなります。特に外壁材として使用したときに注意してほしい理由としては、セメントを使用する外構工事などが、外壁に近いところで行われることが理由の一つとして挙げられます。
黒点現象自体は住宅に大きなダメージを与えることはありませんが、光沢が失われシミのようになるため、美観が損なわれてしまうでしょう。塗装を施しているガルバリウム鋼板には黒点現象の心配は要りませんので、気になる方は塗装を施しているガルバリウム鋼板をお勧めします。
これは屋根に使用した場合にも言えることですが、特に外壁材として使用したときは注意しましょう。
素地とは
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外壁塗装や屋根塗装でいう素地とは、塗装するものがまだ塗装が施されていない露出してある表面のこと
3-3.外壁・屋根に共通する注意点
次に外壁に使用した場合と、屋根材として使用した場合のときの共通点をご紹介します。
塗り替えをするとき
住宅材として使用されるガルバリウム鋼板には元からフッ素加工されている製品もあります。住宅塗料でのフッ素系塗料は高耐久・高性能・高寿命と性能がとても優れていますが、その分塗替えを行うときは困難です。フッ素系塗料は汚れを付きにくくするため、表面がとても滑らかなのが特徴ですが、逆を言うと滑らか過ぎるため、塗り替え時に必ず行うケレン作業※を念入りに行わなければなりません。こうしたことからも、熟年な技術を持ち合わせている業者に依頼することをお勧めしている理由の一つです。
ケレン作業とは
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汚れやサビを落とす、またはサビがない場合も塗料の密着をよくするために敢えて傷をつける作業です。専用用具であるヤスリ等の電動工具を使用します。
保証制度の注意
ガルバリウム鋼板のメーカーのほとんどは、メーカー保証を10年程付けているところが多いです。しかし、このメーカー保証ですが、製品であるガルバリウム鋼板に加工したり、切断をしたりすると保証の対象外となってしまいます。ガルバリウム鋼板を使用するときは、建物に合わせて加工するのが一般的ですので、使用する前に保証内容をメーカー側にしっかりと確認してみましょう。
●ガルバリウムの名称について
「ガルバリウム鋼板」は正式に言うと、日鉄住金鋼板株式会社がガルバリウム鋼板の登録商標を持っています。ですので、他の住宅材メーカーはガルバリウム鋼板と同じ性質である金属板のことをガルバリウム鋼板とは言わず違う名称を使用していますので注意しましょう。
住宅材メーカーによっての、ガルバリウム鋼板の名称は下記の通りです。
・【塗装高耐食GLめっき鋼板】…ニチハ株式会社
・【スーパーガルテクト】…アイジー工業株式会社
・【塗装溶融55%アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板】…ケイミュー株式会社
上記のようにメーカーによって名称が変わりますが、アルミニウム55%・亜鉛43.4%・シリコン1.6%からなる、アルミ亜鉛合金めっき鋼板という構成は同じです。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか?
「高性能」と言われているガルバリウム鋼板にも、いくつかの欠点が存在します。
だからと言って、欠点があるから「ガルバリウム鋼板は良くない」ということではなく、全ての住宅材に利点欠点は存在するのです。どの住宅材が完璧なのかに視点を集めるのではなく、利点欠点を踏まえた上で、どの住宅材がご自身の生活スタイルに合うのかを総合的に見て見定めましょう。
ガルバリウム鋼板に向いている人はこんな人
・塩害地域にお住まいじゃない方
・雨音が気にならない方
・水をかける作業の時間が取れる
・子供がいない方
選んだ住宅材の欠点を理解した上で、弱点を補えるようにきちんとした対処を心掛けましょう。
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